「ヤング≒アダルト」

原題:Young Adult
監督・製作:ジェイソン・ライトマン(「サンキュー・スモーキング」「JUNO/ジュノ」「マイレージ・マイライフ」)
脚本:ディアブロ・コーディ(「JUNO/ジュノ」)
配役:シャーリーズ・セロン・・・・作家;メイビス・ゲイリー
パットン・オズワルト・・・・旧知;マット・フリーハウフ
パトリック・ウィルソン・・・前カレ;バディ・スレイト
エリザベス・リーサー・・・・バディの妻;ベス・スレイト
コレット・ウルフ・・・・・・マットの妹;サンドラ・フリーハウフ
ルイザ・クラウス・・・・・・ホテルのフロント係
J・K・シモンズ・・・・・・出版社の男(声のみ)
2011年アメリカ映画/90分/ビスタ
配給:パラマウント/2012年2月25日公開
オフィシャルサイト
*2012年2月28日 TOHOシネマズ シャンテ① ★★★☆
【ストーリー】
ひとり暮らしのメイビス・ゲイリー、37歳。自称作家、実はゴーストライター。今日もここミネアポリスで二日酔いの朝を迎え、ペットボトルのコーラをガブ飲みする。愛犬ドルチェに餌をやり、ノートパソコンを開くがアイデアが浮かばず、出版社からの原稿を催促する電話が鳴リ響く。そんなとき、見知らぬアドレスから赤ん坊の写真が添付されたメールが届く。メールは高校時代に付き合っていたバディからだった。翌朝、突然思い立ったメイビスは、荷物をまとめ愛犬とともに車に乗り込むと、故郷マーキュリーの町を目指して走りだした。バディと再び恋に落ちて、輝かしい青春時代を取り戻そうと考えたのだ。
【レビュー】
「≒」はマジカルミラー
部屋の中は散らかしっぱなし、Tシャツにジャージでペットボトルのコーラをガブ飲みしたうえにゲップ。まさに「JUNO」のノリである。エレン・ペイジが演るようなことを、シャーリーズ・セロンがあたかも普段からそうであるように平然とやってのける。
ただの子供の誕生パーティーの招待状を、何を勘違いしたか、育児を放り出したくなった昔の男からのSOSと勝手に解釈。間違いを間違いとも思わず、“勘違いの復縁”を迫るだけならコメディだ。笑ってすませられる。
ところが、ここに登場する30代の女・メイビスは心底マジなのだ。
こうなると、ただひたすらイタい。それも自分のことしか考えず、周りから白い目を向けられて孤立すると、反省もなく逆ギレする。もはや哀れを通り越して不快でさえある。
ところが(ところがを敢えて重ねる)、こんな女でありながら何故か憎めない。
鏡に向かって「私って綺麗?」を連呼するような(そういや、そういう役で出る他の作品も公開間近)鼻につく女に、つい味方してしまうのはなぜだろう。
シャーリーズ・セロンが美人だからではない。
メイビスが何かすればしただけ、彼女が何もないと思っているこの小さな田舎町で、自分だけが何も持っていないことを思い知らされていく。だけど旧知の人々の前で、自分が負け組だと絶対認める訳にはいかない。
その心情を察すると、勇気を持って町を出たメイビスの方こそ皆の羨望なのだと伝えて応援したくなるのだ。
これは、代弁してくれる人が登場する。
邦題に「≒」をつけたアイデアは実に上手い。
「ほぼ同じ」という数学記号だが、文字列に入れ込むと「紙一重」とも取れる。
元カレ≒デブ男マット。見た目は違うが、メイビスの本質を見抜いているのはどちらだろう?
負け組≒勝ち組。恥を晒しただけの旅も、それを糧にすれば作家として新境地が開けるかも?
ヤング≒アダルト。良識ぶったりせず、自分らしさを失わずに歳を重ねられたら、どんなに素敵だろう。
「≒」とは、人生に人とはちょっと違う希望と楽しみをもたらすマジカルミラーの記号かも知れない。これをタイトルに使うとは、目に飛び込む印象も含めて素晴らしい。
もちろん、ダメな女を演じたシャーリーズ・セロンも素晴らしい。どんなに鼻についてアタマにくる女でも、決して憎ませないさじ加減が妙。
この映画、心底笑えないのは、男女に関係なく、自分にも思い当たる節があるからではないだろうか?

